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R02年短答意匠問10
甲は登録意匠イに係る意匠権を有している。甲の意匠権及びその実施権等に関し、次の(イ)~(ニ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
ただし、(イ)~(ニ)の内容はそれぞれ独立しており、相互に影響しないものとする。また、特に文中に示した場合を除き、意匠登録出願は、いかなる優先権の主張も伴わず、秘密意匠に係るものでも、分割又は変更に係るものでも、補正後の意匠についての新出願でも、冒認の出願でもなく、かつ、放棄、取下げ又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされていないものとし、また、名義変更、秘密にする期間の変更は行わないものとし、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく特例を考慮しないものとする。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 なし
枝1
(イ) 乙は、甲の意匠イに係る意匠登録出願の際、意匠イを知らないで、自らその意匠イに類似する意匠ロの創作をし、現に日本国内において意匠ロに係る物品の製造である事業の準備をしていた。乙は、製造の準備をしていた意匠ロ及び事業の目的の範囲内において、甲の意匠権について、先出願による通常実施権を有する場合がある。
解答
◯ 先使用権に該当する者は、先出願による通常実施権は有さない(意29条の2第1項カッコ書)。この点、意匠登録出願に係る意匠を知らないで自らその意匠に類似する意匠の創作をし、意匠登録出願の際、現に日本国内においてその意匠に類似する意匠の実施である事業の準備をしている者は、その準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、その意匠登録出願に係る意匠権について先使用権を有する(意29条)。
しかし、先使用権が認められない場合、例えば意匠イに係る意匠登録出願から設定の登録までの間に、一度乙が意匠ロの事業を廃止した場合に、その後改めて事業の準備を開始して、意匠イに係る意匠権の設定の登録の際に日本国内において意匠ロの実施である事業をしていれば、先出願による通常実施権を有する場合がある(意29条の2第1項柱書)。
あり得るけれど、かなり苦しい。
枝2
(ロ) 甲は、単独で創作した意匠イについて意匠登録を受け、その後、意匠イに類似する意匠ロについて出願し、意匠イを本意匠とする関連意匠として登録を受けた。しかし、関連意匠ロは甲と乙の共同創作であって、意匠登録を受ける権利を有していたのは甲と乙であった。意匠イに係る意匠権が存続している場合、乙は、甲に対し、関連意匠ロに係る意匠権の持分の移転を請求することはできない。
解答
✕ 関連意匠の意匠権についての移転請求は、本意匠又は関連意匠の意匠権のいずれかの消滅後はすることができない(意26条の2第2項)。しかし、本枝では意匠イに係る意匠権が存続しているので、関連意匠ロに係る意匠権の持分の移転を請求できる。
枝3
(ハ) 乙は、甲から、意匠イに係る意匠権の通常実施権の許諾を受けて、意匠イの実施の事業をしている。乙は、意匠イの実施の事業を丙に譲渡することにした。乙は、甲の承諾を得なければ、甲の意匠権に係る通常実施権を丙に移転することができない。
解答
✕ 裁定通常実施権を除く通常実施権は、実施の事業とともにする場合にも移転できるので(意34条1項)、甲の承諾を得なくとも通常実施権を丙に移転できる。
枝4
(ニ) 乙は意匠ロについて意匠登録を受けていた。その後、甲は意匠ロに類似しない意匠イについて意匠登録出願をし、意匠登録を受けた。乙は、意匠イの出願後、かつ意匠ロに係る意匠権の存続中に、意匠ロに類似する意匠ハを実施していた。意匠ハは意匠イにも類似していた。乙は、意匠ロに係る意匠権の存続期間満了後も意匠ハを実施するためには、甲に対し協議を求めて通常実施権の許諾を得なければならない。その協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、乙は特許庁長官の裁定を請求しなければならない。
解答
✕ 意匠登録出願の日前の意匠登録出願に係る意匠権のうち登録意匠に類似する意匠に係る部分がその意匠登録出願に係る意匠権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その原意匠権者は、原意匠権の範囲内において通常実施権を有する(意31条1項)。そのため、通常実施権を有する乙は、甲に対し通常実施権の許諾を得る必要はない。
解説
枝1のみが正しいので、1の1つが正解
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