H16年改正後の職務発明訴訟の事例2
・平成26年(ネ)第10126号 職務発明対価請求控訴事件
H16年改正後の職務発明訴訟の事例について、知財高裁の判決が出ました。
結論は地裁と同様で、原告(使用者)の職務発明規程を適用するのが不合理であるとしつつも、独占の利益がないので特許を受ける権利を承継させたことによる相当対価は認められませんでした。
ただ、不合理性の判断に考慮される各要件について以下のように認定している点が注目です。
特に、協議と意見の聴取の辺りは自社の規程を再確認した方がよいと思います。
新入社員、中途採用者に対する協議をしっかり行う必要がありそうですね(徹底が難しい)。
①協議の状況
職務発明規程が従業者の入社前に策定されていた場合、協議はなかったものと解される。
ただし、職務発明規程が策定された後に雇用された者との間では、既に策定されている職務発明規程を前提にして個別に協議をすれば(又は職務発明規程の内容を説明の上で了承を得れば)、協議」があったと解される。
なお、雇用される際の書面に、職務発明規程等を確認することを求める記載があり、従業者がこれに署名していたとしても、単に被控訴人発明規程を確認することを求めただけでは、協議があったとはいえないと解される。
②基準の開示の状況
職務発明規程が社内のイントラネットを通じて従業者らに開示されており、且つ発明者もその内容を確認することができれば、開示されていると解される。
また、特許を受ける権利を使用者等に承継させる前に、発明者へ職務発明規程が個別に開示されれば、開示されていると解される。
③意見の聴取の状況
「意見の聴取」は、従業者等に対し意見を陳述する機会を付与すれば足りる。
具体的には、職務発明規程において意見の聴取手続及び不服申立の手続等が定めているか、または個別に発明者に対して意見の聴取機会を付与していれば、意見の聴取があったものと解される。
なお、発明者が特許を受ける権利の譲渡を拒んでいて意見聴取できなかったとしても、意見の聴取機会がなかったことの正当な理由にはならない。
④その他の事情
発明者の給与が高額であったとしても、それだけでは労務の対価であるに過ぎず、考慮すべきその他の事情とは認められない。
なお、発明者が、発明後に発明をしたことに基づいて特別の待遇を受けたことも認められれば、発明者の給与額は考慮すべきその他の事情と解される。
⑤不合理性の認定
職務発明規程がに従業者らの意見が反映されて策定されていないこと、又は職務発明規程を従業者らが事前にこれを知らないことは、不合理であると判断される事情に解される。
さらに、対価の算定に当たって、発明者の意見の聴取機会がなかったことも、不合理であると判断される事情に解される。
なお、少なくとも①協議があったとはいえず且つ③意意見の聴取機会がなかった場合には、不合理であると判断され得る。
ただし、「協議の状況」、「基準の開示の状況」及び「意見の聴取の状況」は、不合理性の認定のための考慮要素にすぎず、「協議」、「基準の開示」又は「意見の聴取」の存在が合理性の認定のための要件となるものではない。
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