スペースでZOOM商標侵害について話してみた

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商標法 独学 チワワ

9月の下旬に「(音楽用電子機器の)Zoomが(ビデオ会議の)Zoom(の代理店)を商標権侵害で提訴」というニュースがありました。
具体的には、先に登録されていた「ZOOM」商標の商標権者である株式会社ズーム(以下ズーム社)が、近年ビデオ会議で著名となった米国企業であるZoomビデオコミュニケーションズ(以下Zoom社)の日本代理店であるNEC ネッツエスアイ株式会社を、商標権侵害を理由とする商標使用の差し止めを求めて訴えたという事件です。
この事件に関してTwitterのスペース(「ZOOMの商標権侵害について話そう」)で意見交換をしましたので、その報告です。

状況のおさらい

以下に、商標に関する状況のおさらいをします。
なお、訴訟当事者となる被告はNEC ネッツエスアイ株式会社ですが、争点になるZoom社の商標と、関連す株式会社トンボ鉛筆(以下トンボ社)の商標とについておさらいします。
また、Zoom社は、非類似役務を指定した商標登録6417625号の商標権を取得しています。

1989年10月19日:トンボ社が商標登録4363622号を出願
2000年2月25日:トンボ社が商標登録4363622号を登録
2005年8月8日:ズーム社が商標登録4940899号を出願(商願2005-073679)
2006年3月31日:ズーム社の商標登録4940899号が登録
2020年5月18日:Zoom社が商願2020-061572を出願
2020年10月14日:Zoom社の商願2020-061572に対して拒絶理由通知
2021年2月12日:トンボ社の商標登録4363622号に対して取消審判請求

なお、以下では、それぞれトンボ社商標、ズーム社商標、Zoom社出願商標と言います。
また、ズーム社出願商標に対する拒絶理由通知では、トンボ社商標及びズーム社商標が、引用商標として挙げられています。

ズーム社商標はZoom社出願商標に類似しているのか?

正確には、Zoom社出願商標に類似しているかというよりも、NEC ネッツエスアイ株式会社が使用している商標に類似しているかが問題となります。
しかし、NEC ネッツエスアイ株式会社がZoom社出願商標を使用しているの明らかですので、スペースでは使用商標と同一であるものとして話をしました。
また、トンボ社商標、ズーム社商標、Zoom社出願商標は、いずれも類似商品(電子応用機械器具又はそれに類似する商品)を指定していることを前提とします。

この点、Zoom社出願商標の意見書でも述べられていますが、ズーム社商標は、トンボ社商標があるにも関わらず登録されています。
そして、ズーム社商標は、特殊な字体で表現されており、仮に「ズーム」と読むとしても、外観においてトンボ社商標とは明確に区別できるという理由で登録された可能性があります。
そのため、比較的に容易にアルファベットの「zoom(ズーム)」と認識できるZoom社出願商標は、外観において明確にズーム社商標とは異なり、両者は非類似であるとの意見がありました。
以下に、各商標をJ-Plat Patの公報から引用して表示します。

トンボ社商標
ズーム社商標
Zoom社出願商標

個人的には、現在の状況を考慮すれば、ズーム社商標は「ズーム」と読むのが自然であるように思いますが、商標専門家からすると、出願経過を考慮すれば「ズーム」とは読まない可能性があるとのことでした。
この場合、称呼・観念も非類似なので、商標自体が非類似となります。

Zoom社の使用商品はズーム社の指定商品と類似するのか?

Zoom社(NEC ネッツエスアイ株式会社)が提供する商品は、ビデオ会議用プログラムであると思われます。
一方、ズーム社が提供する商品は、音楽電子機器用のプログラムでと思われます。
とすると、需要者を一般消費者とすると、両商品、ひいてはそれらに付された商標を見て、出所の混同を生じさせることはなさそうです。
そのため、所定の条件を満たせば、商品が非類似となるのではないかという意見がでました。

具体的には、ズーム社商標の指定商品には、プログラムを包含する包括表示である電子計算機用プログラムが入っています。
しかし、ズーム社は、その中のビデオ会議用プログラムには、ズーム社商標を使用していない可能性があります。
そのため、不使用取消審判によって、ビデオ会議用プログラムの部分の商品についての商標権を取り消せば、差し止めを免れることができるという話です。

また、ズーム社商標の使用が音楽電子機器に付随するプログラムに対する使用にとどまるならば、ズーム社は、音楽電子機器には使用していても、音楽電子機器用のプログラムには使用していないということも主張できるのではないかという話も出ました。
ただし、ズーム社商標に対する取消審判は請求されておらず、またZoom社出願商標の審査において提出された意見書でも、ズーム社商標の不使用の事実は指摘されていません。
もしかしたら、見つかっていないところで、ビデオ会議用プログラムに関連するズーム社商標の使用例があるのかもしれません。

まとめ

1.ズーム社商標の前にトンボ社商標がるので、ズーム社商標は「ズーム」とは読まない又は「zoom」と外観非類似である可能性がある
2.ズーム社商標の指定商品の内、ビデオ会議用プログラムに部分を不使用取消できる可能性がある

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