特許等の諸手続、来年以降の押印は「実印」に限定

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弁理士 実務 独学 チワワ

既にご存知と都は思いますが、令和2年12月28日以降に特許庁に提出する書面において、一部の手続(実質的には下記の押印が存続する手続きの33種)を除き、押印が不要となりました。

特許庁関係手続における押印の見直しについて

なお、「押印を求める手続の見直し等のための経済産業省関係省令の一部を改正する省令」の第1条2号から5号(特許法施行規則、実用新案法施行規則、意匠法施行規則、及び商標法施行規則の各様式)が関連する改正個所になります。
既に施行規則の改正は公布・施行されていますので、今年の弁理士試験の出題範囲ですが、様式の変更ですので出題可能性はかなり低いと思われます。

押印が存続する手続

押印が存続する手続きは、
①偽造による被害が大きく、押印が要求される手続(33種)
②条約で署名等が求められており、押印を選択肢として含む手続(74種)
の2種類です。

この内、実質的に押印をする場面として考えられる、①の偽造による被害が大きい手続は、具体的には以下の通りです。
出願人名義変更届
氏名(名称)変更届
住所(居所)変更届
特許権等の移転登録申請
登録名義人表示変更登録申請
質権設定登録申請
専用実施(使用)権設定登録申請
仮専用実施権登録申請
通常使用権登録申請
商標権分割申請登録
商標権分割移転登録申請
実用新案権抹消登録申請

さらに、通常業務において押印をする手続は、実質的には「出願人名義変更届」と、「特許権等の移転登録申請」に限定されると思われます。
他の手続きは、その機会が非常に少ないので、通常業務で目にすることはないのではないでしょうか。

押印をする者

さて、①の偽造による被害が大きい手続で押印をする必要がある者は、被害を受ける者(利害関係者、譲渡人、登録名義人、権利設定者など)です。
例えば、「一般承継による特許権等の移転登録申請」の場合、偽造された場合に被害が大きい利害関係者の承諾が必要な手続のみ押印が存続します。
また、①の偽造による被害が大きい手続の内、さらによくある手続としては「特定承継による特許権等の移転登録申請」があります。
この場合、偽造された場合に被害が大きい譲渡人のみ押印が存続し、譲受人の押印は不要となります。

さらに、申請書等の手続のトリガーとなる書面の押印は不要となり、証明書等のみ押印が存続します。
例えば、移転登録申請書の記載例に従えば、
「申請人(登録権利者)」※譲受人
「申請人(登録義務者)」※譲渡人
の押印が不要となり、記名(パソコンでタイプしたもの)のみでよいことになります。
なお、2021年1月13日現在では、記載例の修正がなされておりません。

一方、譲渡証書の記載例に従えば、
「譲渡人」※申請人(登録義務者)
の押印が存続します。

なお、代理人がいる場合の記載例に従えば、
申請書の「代理人」※弁理士等
委任状の「申請人(登録権利者及び登録義務者)」
の押印も不要となります。

さらに、単独申請の場合の「登録義務者の承諾書」については、通常は「単独申請承諾付譲渡証書」として作成されるので(2通作成するのは面倒なので)、こちらについても譲渡人の押印が存続すると考えられします。

来年以降の押印は「実印」に限定

ここからが本題ですが、令和3年末までは、現在の届出印での手続が可能です。
しかし、令和4年1月1日以降は、求められた場合に印鑑証明書が提出できない印鑑の使用ができません。
具体的には、
個人の場合:実印+印鑑証明書
法人の場合:①法人実印+印鑑証明書、又は
      ②実印により証明可能な法人の代表者印+法人実印+印鑑証明書
が必要となります。

蛇足ですが、「法人実印」は、代表者印、代表取締役印、会社実印、丸印などとも呼称されます。
いずれも、登記所(法務局)で印鑑届書を提出して登録されている印鑑のことです。
そのため、上記②の例でいう「証明可能な法人の代表者印」は、登録されていない代表者印のことです。

現在の運用では、
個人の場合:申請人個人を特定できる認印は認められる
法人の場合:代表者印と認められる印鑑は認められる
となっております(登録の実務Q&A)。

そのため、令和4年1月1日以降は、特に個人の場合には、届出印を実印に変更する必要が生じる可能性があります。
ただし、「求められた場合に印鑑証明書が提出できない印鑑の使用ができません」という説明からすると、実印でないと疑われる場合には印鑑証明書の提出が求められと思われます。
なお、求められた場合には、押された印鑑が実印であることを証明するために、印鑑証明書を提出する(手続補正書)という処理になります。

なお、届出印を実印に変える場合に、印鑑変更届の提出が必要になるのかが疑問です。
この点、従来は、印鑑証明書を提出した後の手続きは新印鑑の届出があったものとして取り扱われることになっていました(令和2年12月28日付で削除)。
そのため、印鑑変更届の提出は不要であると思われます。
印鑑登録証明書をもって手続者の同一性を証明した後の印鑑の取扱い(削除)

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