意匠審査基準改訂について2

意匠審査基準改訂について2
注目個所の続きです
さて、部分意匠の欄は廃止されましたので、願書に添付された図面において、意匠に係る物品全体の形態が示されていな場合は、部分意匠として取り扱われるようになります。
また、部分意匠と全体意匠とが同一又は類似することがあり得るように改訂されました。
なお、全体意匠と部分意匠とが類似であり、且つ全体意匠が部分意匠をそのまま含む場合に、利用関係とどう整合させるのかは不明です。
意匠審査基準改訂の概要(特許庁HP)
注目個所(第6部から第7部第2章)
・意9条1項又は2項の規定は、全体登録出願同士、部分意匠の登録出願同士、全体意匠と部分意匠についても判断する(基準第6部)。
・図面に「意匠登録を受けようとする部分」と「その他部分」を含む場合、意匠登録を受けようとする部分を実線で描き、その他の部分を破線で描く等により意匠登録を受けようとする部分を特定し、且つ図面の記載のみでは特定できない場合、特定する方法を願書の「意匠の説明」の欄に記載する。ただし、図面の記載のみで特定できる場合、記載されていなくともよい(基準第7部第1章)。
・以下の場合、図の省略が認められる(基準第7部第1章)
①同一又は対称である図の省略(意施則第6備考8)、②意施則第6備考9により認められた図の省略、③表面図と裏面図が同一若しくは対称の場合又は裏面が無模様の場合の裏面図の省略(意施則第6備考10)、④物品と一体として用いられる物品に表示される画像のみについての部分意匠の出願の場合に、画像図以外の意匠に係る物品を表す一組の図面又は一部の図の省略、⑤意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲が特定できる場合であって、意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみが表れる図の省略
・部分意匠の場合、意匠登録を受けようとする部分を図示なく説明の記載のみで特定すること、使用状態を示す参考図等のみで特定することは認められない。ただし、断面図を加えないと特定できない場合には、断面図を加えて特定できる(基準第7部第1章)。
・「意匠登録を受けようとする部分」を認定する際には、出願人が図面で開示した範囲を原則とし、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」を含む場合、 願書の「意匠の説明」の欄に記載した特定方法により行う(基準第7部第1章)。
・「意匠登録を受けようとする部分」の形態は、全体意匠と同様に、断面図、斜視図等その他必要な図及び使用の状態を示した図等その他の参考図を含む図面に基づいて認定する(基準第7部第1章)。
・意匠登録を受けようとする部分は、一定の範囲を占める部分(意匠の外観の中に含まれる一つの閉領域)でなければならない。また、意匠登録を受けようとする部分とその他部分の境界が明確でなければならない。部分が稜線のみのものは、稜線が面積を持たないため該当しない。また、意匠に係る物品全体の形態のシルエットのみを表したもの(例:乗用自動車の側面を投影したシルエットのみを表したもの)は、一つの閉じられた領域でないために該当しない(基準第7部第1章)。
・部分意匠が具体的なものと認められるためには、(①部分意匠の意匠に係る物品、②意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能、③意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲、④意匠登録を受けようとする部分の形態、⑤「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」の境界)が、意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、願書の記載及び図面等から直接的に導き出されなければならない(基準第7部第1章)。
・図面等の具体的な表現(及び意匠の説明の欄の記載)によって、部分意匠に関することが明らかな場合、境界線の表示がないことが作図上の誤記と認められ、願書の記載及び図面等を総合的に判断すれば、境界を当然に導き出せる場合、図面等に意匠登録を受けようとする物品の一部のみが表されており、図面を省略する旨の記載のない場合であって、意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能、形態、物品全体に占める位置、大きさ、範囲並びにその他の部分との境界が明確な場合、その他部分の全体が一部しか示されていな場合であって、物品の性質に照らし、意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲を導き出せる場合、は意匠が具体的なものと認められる(基準第7部第1章)。
・以下の場合は意匠が具体的なものと認められない(基準第7部第1章)。
①部分意匠であるか、全体意匠であるか明らかでない、又はいずれの部分が意匠登録を受けようとする部分であるか明らかでない
②意匠に係る物品又は意匠登録を受けようとする部分の具体的な用途及び機能が明らかでない
③意匠登録を受けようとする部分の全体の形態が表されていない
④意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲を特的できない(その他の部分の不図示、その他の部分の形態の各図不一致)
⑤意匠登録を受けようとする部分の形態が明らかでない(各図不一致、部分が一つの閉じられた領域でない、部分を参考図のみで特定している、意匠の説明の欄の文章のみで部分を特定している、部分について複数の形態が考えられ一の形態を導き出せない)
⑥その他の部分との境界が不明確
・一つの部分意匠の意匠に係る物品の中に、物理的に分離した二以上の部分が含まれているものは、意匠ごとにした意匠登録出願ではない。但し、対称となる形態、一組となる形態等、関連性をもって創作され、形態的な一体性が認められる場合、全体として一機能を果たすことから一体的に創作され(例:理髪用はさみのもち手部分、携帯電話操作ボタン)、機能的な一体性が認められる場合、ある用途及び機能を果たすための部分、形態的なまとまりを有する部分をその他の部分とした場合、開示がなされていない部分によって隔てられ、意匠登録を受けようとする部分が図面上物理的に分離した状態で表れている場合、は一意匠と扱う(基準第7部第1章)。
・全体意匠と部分意匠とが類似するには、①両物品が同一又は類似であり、②全体意匠と部分意匠の意匠登録を受けようとする部分との用途及び機能が同一又は類似であり、③全体意匠の形態と部分意匠の意匠登録を受けようとする部分の形態とが同一又は類似であり、④全体意匠の物品全体に対し、部分意匠の意匠登録を受けようとする部分の当該物品全体の形態の中での位置、大きさ、範囲が当該意匠の属する分野においてありふれた範囲であるることを要する。なお、その他の部分の形態のみについては、対比の対象としない(基準第7部第1章)。
・総合的に判断して、部分意匠であることが明確であって、部分を当然に導き出せるときに、部分を特定する方法に関する記載を補充する補正は、要旨変更ではない(基準第7部第1章)。
・総合的に判断しても、図面のみでは意匠登録を受けようとする部分の形態、位置、大きさ、範囲、その他部分との境界を当然に導き出せないときに、部分を特定する方法に関する記載を削除して、部分意匠であるか全体意匠の部分であるかを不明確とす補正、又は意匠登録を受けようとする部分を不明確にする補正は、要旨変更である(基準第7部第1章)。
・その他の部分の一部を実線にして、又はその他の部分の輪郭形状を変更して、意匠登録を受けようとする部分の形態、位置、大きさ、範囲を、当然に導き出すことができる同一の範囲を超えて変更する補正は、要旨変更である。また、部分意匠であることを当然に導き出せるときに、その他の部分を全て実線に訂正する補正は、要旨変更である(基準第7部第1章)。
・部分意匠において、パリ条約による優先権等の主張の効果が認められない例(基準第7部第1章):
①第一国出願が物品全体の形態について登録を受けようとする意匠として開示され、日本出願がその一部について登録を受けようとする場合
②第一国出願が部分意匠であり、日本出願における部分意匠の意匠登録を受けようとする部分に、第一国出願に無い内容が付加された場合、又は、第一国出願の内容の一部が含まれない場合
③第一国出願が複数の部分意匠であり、日本出願がそれらを組み合わせた部分意匠の場合
④第一国出願が部分意匠であり、日本出願が(一般に破線で表される)その他の部分を実線に変更した全体意匠の場合
⑤第一国出願において開示されていない範囲について、意匠登録を受けようとする部分として追加した場合
続きます
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なお、直近の本室更新は「H30年短答試験条約問10」です。

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