先出願による通常実施権と商標
先出願はなぜ商標にはないのか – 短答2年目
2012/12/29 (Sat) 13:51:14
単純な質問で恐縮です。
意匠法では、
A、A’、A”、A”’と出願された場合、
昔はA’はAで否定され、A”はA’で否定され、ブラックボックス化して登録されなかったのに対して、
先出願の制度ができたことから、A”は登録されて、A’に先出願による通常実施権が設定されたと理解しています。
まず、これは正しいでしょうか?
次に、本題ですが、
なぜ、
商標法においては
先出願の使用権のようなものがないのですか?
商標では、禁止権の延長で、
A, A’, A”, A”‘のように拒絶したとしても
公開制度があるので、ブラックボックスにはならないので、
元のまま制度がいじられていないのでしょうか?
4条1項11号は、先願の登録商標(と同一)または類似する商標は登録不可
となっていますので、もともとA’はAにより拒絶されるが、A”は登録されると考えて宜しいのでしょうか?
基本的な質問ですが、宜しくお願いします。
Re: 先出願はなぜ商標にはないのか – 管理人
2013/01/04 (Fri) 20:23:08
まず、ブラックボックス化の件は先後願(意9条)の話ではなく、意66条3項の話です。
後で確認して下さいね。
さて、A”が登録されるようになった理由は、先出願の制度ができたからというよりも、青本に書いてあるように拒絶査定確定出願の先願の地位が消滅するようになったからです(意9条3項)。
そして、先出願による通常実施権が設けられた理由は、A”が登録された場合に、先使用による通従実施権(意29条)が認められないときに、先願に係る拒絶査定確定出願の実施が制限されないようにするためです。
これにより、青本に書いてあるように、自らは意匠登録を受けることはできないながらも他人の許諾を得ることなく実施することが可能であるという期待権を保護しています。
次に商標法の話ですが、未登録周知商標Aがある状態で、A’, A”の順で出願され、且つAとA’が類似し、A’とA”も類似すると共に、AとA”が非類似であるという前提でお答えします。
この場合、商4条1項10号のみを考えれば、A’は拒絶されますが、A”は未登録周知商標Aと非類似なので登録されます。
ここで、上記期待権について考えると、未登録周知商標Aが商標登録出願されればA’は使用できなくなりますので、そもそも期待権が発生しません。
よって、商標法には先出願の使用権のようなものがないものと思われます。
ところで・・・質問の前提がめちゃくちゃです。
意29条の2は、意匠権の設定登録がされていない公知意匠又はこれに類似する意匠の存在によって拒絶された場合の規定です。
よって、登録意匠Aがあれば、意匠A’は実施できません(これも青本に書いてある通りです)。
つまり、期待権の保護という意29条の2の上記趣旨を考えれば、商標Aの登録可能性に基づいて質問の答えを導き出せると思います。
なお、意29条の2と同様の事例を商標法で考えるならば、未登録周知商標によって拒絶された事例が前提となります。
疑問に感じたときには、まずその前提が正しいか否かよく検討して下さい。
【関連記事】
「意29条の2について」
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