弁理士試験-不正使用取消と色違い類似

不正使用取消と色違い類似
本ブログは独学の弁理士講座の別室です。
なお、本日の本室更新は「商標法第9条の2」です。
商標法70条ほかについて – こけし
2009/11/17 (Tue) 17:55:37
お世話になっております。
3点ほど質問です。
1.(弁理士受験新報の問題及び解答です)
Q:商標Aについての商標権者が、Aと色違い類似商標であるA’を、第三者の著名商標と類似していることを承知の上で指定商品に使用した場合。
(すなわち、故意、混同あり)
51条の取り消し審判の対象となるか?
A:商標70条1項では、色違い類似商標は51条の適用については「登録商標」に含まれない。
70条3項では、色違い類似商標は、51条にいう「登録商標に類似する商標」に含まれない。
したがって、禁止権の範囲での使用に付き故意があり、混同を生じさせていたとしても51条の取り消し審判の対象とならない。
(↑ここまでは理解できます。)
しかし、故意に混同を生じさせていることが明らかである場合には、商標の使用をするものが業務上の信用を図り・・・・・(略)とする法目的に反する結果となり妥当ではない。
よって不正使用取り消し審判により取り消される場合がある。
↑このように考えると、70条3項の存在、及び、51条にて故意が要件とされている意味がなくなると思うですが・・・。
どのように考えたら良いのでしょうか。
2.平成21年度 論文試験 特許法「第一問」
(解答とは無関係ですが)
請求項1が新規性欠如している場合、Aは先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴でないため、
もともとの、請求項1及び2は発明の単一性の要件を満たしていないと理解して良いでしょうか?
(請求項1:A、請求項2:A+B)
3、「クレームアップ補正」とはどのような補正を言うのでしょうか?
よろしくお願いします。
ブログの方も何時も読ませていただいてます。
今日もぽち、しておきます。
Re: 商標法70条ほかについて – 管理人
2009/11/18 (Wed) 12:24:15
ぽちありがとうございます。
さて、1については、もしかしたら、下級審の判例があるのかもしれません。
とはいえ、やや強引な主張だと思われます。
条文に即して記載するならば、下記のような記載が安全だと思われます。
「色違い類似商標であるとしても、色彩を付することによって非類似になるような商標はあくまで非類似であり、商70条で言う商標には該当しない(青本)。
よって、色彩を付することにより商標AとA’とが非類似になれば、不正使用取り消し審判により取り消される場合がある。」
2.については、発明の単一性の要件を満たしていません。
詳しくは、審査基準を見るのがてっとり早いです。
(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_i-2.pdf)
なお、審査基準には、以下のような記載があります。
「特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合には、当該発明と他の発明との間で、同一の又は対応する特別な技術的特徴を見出すことができないため、発明の単一性の要件を満たすとはいえない。」
3.については、「クレームアップ補正」は、特許請求の範囲に記載されていない構成を、明細書や図面の記載から特許請求の範囲に組み入れる際に使われる言葉です。
ただし、正確な定義はないと思います。
Re: 商標法70条ほかについて – ペンキ
2009/11/20 (Fri) 23:49:02
Q1について
ご指摘のように、登録商標に類似する商標であっても、色彩のみが異なる類似商標は、商51条1項における「登録商標に類似する商標」に含まれない旨規定されていますので(商70条3項)、商標権者がこれを使用することによって品質(質)の誤認や出所の混同が生じても、何人もその登録商標取消しについて審判請求ができないこととなります。
しかしながら、例えば登録商標が「NELSONYARN」「ネルソンヤーン」の文字を白抜きで2段に横書してなるような場合、欧文字の「SONY」の部分のみを着色したとすれば、明らかに商70条3項に該当する類似の商標ですので、商51条の規定の適用の範囲外であるということになります。
しかし、このような場合は、登録商標の指定商品が電気機械類等であると否とを問わず、著名商標「SONY」にあやかろうとする意思が推認されるのが通例ですから(つまり、取引の経験則に照らして考えると、登録商標の一部だけを着色すれば、その部分だけ看る者の注意を強く惹きますから、着色した文字から構成されている他人の登録商標(著名商標)と混同を生ずることとなると同時に権利者に「故意」があったと解されることとなります)、条理上、商51条を適用しなければ不合理な結果となるものと考えます。
法の不備であることは明らかですが、このような場合は権利の濫用であって正当な権利の行使といい得ませんので、商70条3項は適用しないこととして、商51条を適用すべきであると考えます(網野・商標905p)。
この網野先生の見解を受けて、弁護士の平尾先生も、「登録商標と色違い商標の使用は本来的使用権の範囲内ですから(商70条1項で商25条を掲記)、商51条の審判の対象とはなりません(商70条3項)。ただし、不正競争の目的をもって使用した場合は別です。
たとえば、緑一色の「NELSONYARN」の商標登録を受け、このうち「SONY」の文字のみを赤色に着色して使用した場合は、商70条3項の適用はなく、商51条の審判の対象となると解します。商70条は種々の色彩を付して商標を使用したいというニーズに対応するための規定ですが、この場合は「SONY」商標の信用にただ乗りするために商70条を潜脱悪用したものですから、商70条の適用はないと解することが合理的だからです。」と述べています(「商標489p)。
したがって、商標Aについての商標権者が、Aと色違い類似商標であるA’を、第三者の著名商標と類似していることを承知の上で指定商品に使用した場合、商51条の取り消し審判の対象となるものと解します。本事案は、網野先生が指摘している通り、商標制度の条理により解釈せざるをえないケースであると考えます。
皆さんの法解釈の参考にしていただければ幸いです。
Re: 商標法70条ほかについて – 管理人
2009/11/21 (Sat) 11:04:39
ペンキさん
ありがとうございます。
網野に記載があったのですね。
ところで、「色彩を付することにより商標AとA’とが非類似になれば、不正使用取り消し審判により取り消される場合がある。」という私の記載は矛盾していますので訂正します。
そもそも、非類似ならば、商51条の対象にはならないので、上記記載は誤りです。
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