以下に、職務発明取扱規程例を掲載するが、これは一例に過ぎず、特許法第35条に適合すること、及び現実の職務発明等を取り扱うために必要十分であることを保証するものではありません。実際に職務発明取扱規程を策定・改定するに際しては、弁理士等の専門家の見解を仰ぎ、企業毎に適した規程及び制度を策定して下さい。なお、本職務発明取扱規程例では、汎用性を高めるために細かい手続的規程は別途細則にて定めるという形式を採用しています。
第17条 (退職者の取扱)
従業者等が在職中に職務発明等又は業務発明等を完成させた場合、その従業者等が退職した後も本規程を適用する。
2 従業者等が退職した場合であっても、会社は、第10条第1項各号に定める各報償金を本人に支払う。ただし、報償金の支払先又は連絡先が変更された場合であって、会社に通知がないことにより支払い不能となった場合はこの限りではない。
3 会社は、第2項に定める各報償金として、将来支払うべき各報償金を算定して、退職時に一括して支払うことができる。
4 第10条第1項各号に定める各報償金を受ける権利を有する従業者等は、退職後の支払先及び連絡先を会社に通知しなければならない。当該退職後の支払先又は連絡先を変更した場合も同様である。
解説
・在職期間中に完成した、という範囲の認定の合理性を確保する必要がある。したがって、退職時における確認事項、あるいは、退職時包括契約等による対処が必要である。
・退職後に報償金を都度支払う旨を定めることも考えられるが、管理コストを考慮すれば一括支払いが簡便である。
・退職者にも第12条の意見聴取の機会が付与されるべきである。そのため、退職時一括払いの場合を除いて、退職後の報償金支払い時には、算定の内容及び結果と共に、異議申立て先と異議申立て方法を都度通知することが好ましい。
例文
仲裁センター例:第14条 (退職者・死亡した従業者等に対する対価)
第10条の規定による対価を受ける権利は、当該権利にかかわる従業者等が退職した後も存続する。
2 前項の権利を有する従業者等が死亡したときは、当該権利は、その相続人がこれを承継する。
仲裁センター例:第23条 (退職者の発明)
従業者等が会社在職中に完成した職務発明については、当該職務発明が完成したことが当該従業者等の退職後に判明した場合であっても、本規程の効力が及ぶものとする。
発明協会例:第12条 (転退職または死亡したときの補償)
第9条および第10条の補償金を受ける権利は、当該権利にかかわる発明者が転職し、または退職した後も存続する。
2.前項の権利を有する発明者が死亡したときは、当該権利は、その相続人が承継する。
発明協会例:第19条 (退職後に特許出願された発明)
従業者等が退職後に特許出願した発明が、退職前になされた職務発明であった場合は、発明者は、当該発明の特許を受ける権利または特許権を会社に返還しなければならない。
2. 第3条、第9条から第12条までの規定は、前項の発明について準用する。
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