R2改訂版の意匠審査基準について(その2) – けっこうなベテラン(受験生)
2020/10/14 (Wed) 18:57:08
いつも大変お世話になっております。
第Ⅴ部関連意匠3.7.4(1)のbとdについて質問させて下さい。
dの想定している場面は、移転前の意匠権者が自己の意匠権に係る登録意匠を公開して公知にした後に、当該意匠権を譲り受けた者にとっては前意匠権者の公知行為の責任を負わせるのは酷であるので、譲受者の「自己の意匠」として扱うこととした、という解釈で正しいでしょうか?
bについては、共同出願があった後に、意匠登録を受けようとする権利の一部又は全部が共同出願人以外の者に移転された場合を想定していると考えます。
全部が移転された場合は、意匠登録を受ける権利は元の共同出願人の手を離れるのですから、「自己の意匠」を扱われなくなるのは理解できます。
しかし、一部が移転された場合に、「自己の意匠」と扱われなくなる理由が分かりません。
以上、御教示のほど、よろしくお願い申し上げます。
Re: R2改訂版の意匠審査基準について(その2) – 管理人
2020/10/15 (Thu) 15:21:10
まずdには、「意匠権の移転があり、移転される前の意匠権者と公知意匠の公開者が一致する場合は「自己の意匠」と扱う。」と規定されています。
これは、ご質問の通り、公知の本意匠に係る意匠権が譲渡された場合には、譲受者の「自己の意匠」として扱うという趣旨です。
なお、その理由としては、譲受者に酷であるというよりも、バリエーションの意匠の保護のため、という方が当たり障りがないかと思います。
次に、bには、「関連意匠の意匠登録出願の出願人が複数の者による共同出願である場合に、公知意匠の実施者がそのうちの一人である場合は「自己の意匠」と扱う。ただし、当該公知意匠について当該共同出願人以外の者が意匠登録を受ける権利を有している場合は「自己の意匠」と扱わない。」と規定されています。
可能性が高い事例としては、例えば、甲乙が本意匠の出願人であって、その内の一人が本意匠を公知とした後に、関連意匠を出願した場合には甲乙の両者が出願人でなければならない(新規性等の判断対象となる)ということです。
ただし書きについては、本意匠の出願人と関連意匠の出願人とが完全同一でない場合には、自己の意匠として扱われないことを言っています。
なお、一部移転されたとしても、制度趣旨として本意匠の意匠権者と関連意匠の意匠権者とが同一であることを要しますので、一部が移転されて同一でなくなった場合には「自己の意匠」と扱われなくなるのは自然であるかと思います。
Re: R2改訂版の意匠審査基準について(その2) – 半熟系Nakagaki
2020/10/16 (Fri) 09:32:53
ドクガク先生
すみませんが、コメントさせてください。
・3.7.4(1)のd
最初の質問の記載が間違っており(ドクガク先生が訂正されています)、dの記載は意匠権の「移転」であり、意匠権の「譲渡」ではありません。
このケースの具体例は、他社への事業売却の前後です。
なお、移転と譲渡の違いは確認しておくべきと思います。
・3.7.4(1)のb
具体例は、甲乙の共同開発により開発した本意匠Aと、関連意匠Bとがある場合において、甲又は乙の一方がAを販売等して公知にした場合です。
なお、甲又は乙の実施権者丙がAを販売等して公知にした場合については、3.7.4(1)のcに記載が有ります。
Re: R2改訂版の意匠審査基準について(その2) – 管理人
2020/10/16 (Fri) 12:33:46
半熟系Nakagakiさん
ありがとうございます。
蛇足ですが、「移転」には譲渡等の特定承継と、相続などの「一般承継」とが含まれます。
そのため、相続によって移転前の本意匠の意匠権者と、関連意匠の出願人とが異なるケースも生じ得ます。
なお、事業売却(事業とともに行われる移転)は、特定承継に該当すると思われます。
Re: R2改訂版の意匠審査基準について(その2) – けっこうなベテラン(受験生)
2020/10/16 (Fri) 20:26:38
半熟系Nakagaki先生、ドクガク先生
御回答頂き誠にありがとうございました。
制度趣旨から考えるとすっきりと理解できますね。
コメント