辞書を引く方法の特許
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・審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第10001号)
産業上利用することができる発明か否かが争われた事件です。
まず、以下のクレームをご覧下さい。
「【請求項1】
音素(phoneme)索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書であって、前記辞書は、一つの英単語に関する多要素を横一行に配置し、各単語の同類要素を縦方向の一列に配置した行列構造を持ち、前記多要素は、四つ以上の要素からなり、少なくとも、要素1:英単語の基本音声(母音音素、子音音素、アクセント音素)の国際発音記号(IPA)表記、要素2:英語音声のIPA表記から子音音素を抽出し、ローマ字へ転記したもの、要素3:英単語の綴り字、要素4:英語の対訳語(日本語対訳語または他の言語の対訳語)、を含み、前記辞書内の個々の単語の配列順序を、第1並べ基準:前記要素2のabc順、第2並べ基準:前記要素1の文字コード順、第3並べ基準:前記要素3の文字コード順、第4並べ基準:前記要素4の文字コード順、の並べ基準の順に優先させた並び方にしたことを特徴とする対訳辞書。」
簡単に言うと、
対象とする対訳辞書について,英語の単語を,
①英単語の基本音声の国際発音記号,
②英語音声のIPA表記から子音音素を抽出し、ローマ字へ転記したもの,
③英単語の綴り字,
④英語の対訳語、
の四つの要素を横一行にさせ,
且つ、所定の条件に従って配列させた
対訳辞書である。
そして、請求項3は、
請求項1に記載された対訳辞書を引く方法です。
辞書とそれを引く方法・・・
これが特許になるのか?
これって、編集著作物だよね・・・?
と疑いますが、ちゃんとなっていますね。
音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書(特許第4232957号)
この事件、審査では
「人間が対訳辞書を引く方法自体は人間の創作活動そのもの又は,人間が行うべき動作を特定した人為的取り決めであって,自然法則を利用した技術的思想ということはできない。」
として、対訳辞書を引く方法のみを判断して拒絶しています。
しかし、知財高裁では、
「本願発明は,人間に自然に具えられた能力のうち,子音に対する識別能力が高いことに着目し,子音に対する高い識別能力という性質を利用して,正確な綴りを知らなくても英単語の意味を見いだせるという一定の効果を反復継続して実現する方法を提供するものであるから,自然法則の利用されている技術的思想の創作が課題解決の主要な手段として示されており,発明に該当するものと認められる。」
(一部編集)
として、審決を取り消しています。
だけど、これって人為的な取り決め以外の何物でもないような気が・・・。
辞書はいいとしても、
辞書の引き方はまずいだろうと・・・。
「特定の辞書」の引き方、
ということで、許容されているのだろうが、
釈然としない。
ところで、
本件の出願及び訴訟は、
個人発明家の方がやっているように思われます。
正直、プロがやっても負けそうなこの事例で、
よく勝訴したなと、ちょっと感動しました。
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