知財業界での教育

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弁理士 実務 独学 チワワ

本日7月1日は弁理士の日です
今年も弁理士の日を勝手に盛り上げるために、
弁理士の日記念ブログ企画2024」と銘打って
知財系ブロガーの皆様にご協力いただき、共通テーマで記事を書いております
そして、今年のテーマは「知財業界での教育」です

特許事務所での実務教育

知財業界での教育ということで、特許事務所(弊所)での教育方法を紹介します
なお、弊所といっても、正確には「私」の教育方法ですので、事務所全体で同じ方法で教育しているわけではありません
また、教育対象は、未経験者の例を紹介しますので、経験者の場合には教育方法が異なります
さらに、状況に応じて、途中を省略することがあります(例えば、検索式をチェックして、文献調査の結果はチェックしない等)

【概要】
未経験者の教育の流れは以下の通りです
以下の①から⑤を1セットとして、10セットを目安としています
なお、教育期間は3から6ケ月を想定していますが、習得状況に応じて期間を伸縮させます
①特許調査(先行技術文献調査)実習
②クレーム作成実習
③明細書作成実習
④拒絶理由通知対応実習

【方法】
疑似OJTとして、実際の処理を同じように調査から中間までを行います
教材は、拒絶理由が通知されて特許査定(又は特許審決)になった実例を使います
また、提案書と資料を読んだうえで、疑問点(調査及び明細書作成に必要な情報)を、教育担当(私)にヒアリングをして必要な情報を入手してもらいます
ヒアリングをしてもらうので、明細書を書くために必要な情報を自ら判断して、相手から聞き出す訓練を積んで欲しいからです
実際には、与えられた情報だけで明細書を書くことも可能ですが、特に相手が出願に慣れてない場合には、必要十分な情報が得られないことが多いです
そのときに、不十分な情報で明細書を書かないようにすることを目的としています

特許調査実習

特許調査実習では、以下の流れで進めます
検索式については、妥当な範囲を検索できるのかをチェックします
また、文献調査では、適切な文献を見つけられているのかをチェックします
最後に、あらかじめ作成して行っていた調査結果に基づいて講評をします
①検索式を作成する(J-Plat Pat)
②文献調査

検索式の作成では、100件程度を目安としてA.対象発明と同一の発明、B.組み合わせて対象発明を想到できる発明、C.対象発明の発明者又は出願人が過去に出願した類似の発明、がヒットするような検索式を作成します
A,Bについては、特許可能性を判断すると共に、将来引用される可能性がある文献を探す趣旨で調査対象としています
Cについては、出願人(発明者)の明細書の傾向・好みを把握するために調査対象としています
明細書の元ネタとして使える言い回しを見つけるという意味もあります

文献調査では、出願前の先行技術文献調査ですので、網羅的ではなく、且つ短時間で終わらせることも課題となります
なお、特許調査は不要(出願人が行う)という先生もおられるかと思いますが、出願数が多い分野であれば下位概念での権利化を検討すべきであり、出願数が少ない分野であれば上位概念での権利化を期待できるので、技術の進歩を把握するためには特許調査が有効であると考えています

クレーム作成実習

クレーム作成は、明細書作成前に別途実習を行います
すべてを作成した後に見直すとすると、時間の無駄になるためです
チェックの主なポイントは、A.出願人の希望に沿ったクレームを網羅していること、B.調査結果を踏まえて特許可能性が高いクレームを含んでいること、C.上位概念に含まれる具体的な(実施例に近い)下位概念を福でいること、です

特に、上位概念化をして広いクレームを狙っている場合に、上位概念に含まれる複数の下位概念をイメージしているかどうかをチェックします
例えば、実施例が「接着」であって、クレームが「固定」となっている場合に、接着以外の固定態様(一例として溶着、螺合等)をイメージしているかどうかをチェックします

最後に、既存のクレームに沿うように修正を加えます
これは、後に拒絶理由通知対応実習を行う場合に、クレームが著しく異なると実習が成立しなくなるからです

明細書作成実習

明細書作成実習は(少なくとも初期は)以下の各段階にチェックを挟みながら進めます
細かく分けてチェックをするのは、大幅な修正がある場合の労力の無駄を回避すると共に、短時間でチェックできるようにするためです
また、図面はすでに作成済みのものを使用します
これは、図面を流用することによって、大まかな明細書の構成を既存の実例と類似させることができるからです
①背景技術の作成
②課題の作成
③実施例の作成
④既存の明細書との比較

背景技術の作成をチェックするのは、出願人が想定する背景技術と、特許調査によって明らかになった背景技術との差分を調整するためです
その理由としては、出願人の想定する背景技術は、場合によっては意図的に特許可能性が高くなるような背景技術を設定していることがあるからです
この場合に、代理人である弁理士が勝手に調査をして設定を台無しにすることがないようにしながら、且つ特許可能性がある発明へと導けるように背景技術の調整を入れています

課題の作成については、背景技術の調整に伴って課題の設定も調整する場合と、近年の傾向(新規な課題を解決する発明は進歩性が認められやすい)に合わせて課題を設定するためにチェックをします

実施例の作成については、特にチェックの理由が不要でしょう
なお、ここも第1実施例のチェックと第2実施例のチェックに分けます

最後に、既存の明細書との比較を行ってもらい、作成した明細書に不足している記載を追記してもらいます
これは、後に拒絶理由通知対応実習を行う場合に、明細書が著しく異なると補正できなくなってしまうからです

拒絶理由通知対応実習

すでに拒絶理由が通知されていて且つ特許査定となっている実例を使用して、拒絶理由対応実習を行います
これは、明細書作成時に、拒絶理由を想定して補正のネタを仕込むという体験をしてもらうためです
具体的に、拒絶理由通知対応実習は、以下の流れで行います
①コメント作成
②補正案作成
③意見書作成

コメント作成は、出願人別(大企業、中小企業)で行います
制度説明から必要な出願人と、出願権利化に慣れていて無駄な説明を省略できる出願人とで、それぞれ訓練をするためです
特に、大企業の場合には、特許担当者の時間を無駄にしないコメントを重要視します
例えば、発明の本質的な記載の開示個所を明示して、特許担当者が記載個所を探す手間を省く等です

そして、補正案の作成をチェックするのは、特に説明不要だと思います
また、意見書作成のチェックでは、審査基準→審決→判決の順で、言い回しの流用を推奨しています
特に審査基準通りに判断した結果として、拒絶理由が解消するならば、審査官が受け入れやすいということと、審査官との共通言語で反論すべきであるという考えに基づいてのチェックです

終わりに

いかがでしたでしょうか?
今回は特許事務所での教育の一例について書いてみました

なお、今回の企画に関して他の参加者様の記事をまとめていますので、
弁理士の日記念ブログ企画2024」もご覧になって頂ければ幸いです

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