コロナ禍収束後の知財業界

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特許法 独学 チワワ

本日7月1日は弁理士の日です。今年も弁理士の日を勝手に盛り上げるために、「弁理士の日記念ブログ企画2020」と銘打って、知財系ブロガーの皆様にご協力いただき、共通テーマで記事を書いております。
さて、今年のテーマは「コロナ禍収束後の知財業界」です。

リーマンショック

今回のコロナ禍は2008年リーマンショックと比較されることがあり、その影響はリーマンショック以上であるとも言われています。なお、リーマンショックは、「アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが2008年9月15日に経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事象」(Wikipediaより引用)と定義されているようです。

リーマンショックが発生した2008年と比較して、2009年の出願件数は10%(4万件)程度減少しました。また、審査請求数、外国出願件数等も同時に減少し、加えて代理人手数料の減額なども生じたため、特許事務所の経営にも大きな悪影響を与えました。ただし、外内出願の割合が多い特許事務所は、リーマンショックの影響を即座には受けなかったように思います。

また、リーマンショックでは株価も下落しましたが、その後2万円台を回復するまでに至りました。一方、減少した出願件数は、その後回復することがなく、現在でも減少傾向が継続しているのは、皆さんがご存知の通りです。なお、リーマンショックと同様に日本に大きな影響を与えた現象に、東日本大震災(2011年3月11日)がありますが、出願件数への影響は少なかった(2012年は微増した)と思います。

リーマンショック時の出願件数推移

下記図は2008年1月から2011年12月までの、特許出願件数の前年同期比(=当年出願件数÷前年出願件数)の推移と、日経平均終値の推移です。図から分かるように、リーマンショックの影響は直ちに出願件数に表れています。具体的に、2008年11月は前年比86%と大きく減少しています。半期末である9月の出願件数増加の影響を受けるため、10-11月は出願件数が減少する傾向にはあるのですが、前年同期との比較ですので、大きな減少であったことがわかります。

また、2008年11月から半年ほどたった2009年の夏から秋にも以下のような出願件数の大きな減少がありました。
2009年5月:83%
2009年6月:91%
2009年7月:89%
2009年8月:89%
2009年9月:87%
2009年10月:84%

まとめると、リーマンショックが経済に影響を与えたとタイミング(日経平均株価が暴落したタイミング)から、1か月後に出願件数が大きく減少する短期的減少期が到来し、さらに半年後に6か月間に亘って出願件数が大きく減少する長期的減少期が到来しました。

コロナ禍収束後の出願件数

現在は在宅勤務が推奨される状況であり、企業の担当者と特許事務所との担当者とが出願打ち合わせをし難い状況となっています。特に、日本においては特許事務所や企業の知財部機能が東京に集中しています。そのため、東京都で新型コロナの感染者が多く発生している状況では、出願打ち合わせの回数、ひいては特許出願の件数が大きく影響を受けていると予想します。

特許出願等統計速報によれば、2020年3月は前年同期比で特許出願の件数が3.6%減少しており、2月は6.9%の減少でした。2020年3月は、日経平均が暴落した月ですので、短期減少期が到来するとすれば、2020年4月から5月であると予想します。なお、4月7日に発令された政府の緊急事態宣言が5月25日に解除されており、この時期とも重なるため、出願打ち合わせの延期は必至であり、このことからも出願件数が大きく減少する短期減少期が到来していたのではないかと推測しています。

また、2020年6月は、緊急事態宣言の解除を受けて、延期されていた出願打ち合わせがまとめて開催されたと思われます。そのため、2020年6月から7月は、一時的に出願件数が回復すると予想しています。その後、新型コロナの感染縮小に伴い、出願件数は微減にとどまるものの、次第に新型コロナが経済に与えた影響を受けると推測します。具体的には、コロナ禍収束後も、2020年12月から8月頃には長期的減少期が到来するのではないでしょうか。

おわりに

以上、出願件数が減少するという嬉しくない予想です。私は、出願の減少に備えて、非専権業務(出願権利化以外の業務)の開拓、業務効率化(例えば電子化)の促進等に着手していこうと思います。なお、他の方々の記事をまとめていますので、「弁理士の日記念ブログ企画2020」もご覧になって頂ければ幸いです。

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