知財業界での大ピンチ

弁理士の日
弁理士 実務 独学 チワワ

本日7月1日は弁理士の日です
今年も弁理士の日を勝手に盛り上げるために、「弁理士の日記念ブログ企画2022」と銘打って
知財系ブロガーの皆様にご協力いただき、共通テーマで記事を書いております
さて、今年のテーマは「知財業界での大ピンチ」です

絶対に特許にしなければいけない発明

特許弁理士として長くやっていると一回くらいはあると思うのですが
絶対に特許にして下さい』という依頼(えっ?ないですか??)
少なくとも、私はそういう依頼を受けたことがあります
特許にしなければならない理由にはいろいろあると思いますが
今回の絶対に特許にしなければならない理由は
ずばり社長が創作した発明だったからです
そうだとしても、発明者である社長が相談に来るケースでは、キチンと説明をして「特許にならないこともある」と納得してから出願してもらいます
しかし、このときは、発明者である社長はいらっしゃいませんでした
代わりにいらっしゃったのが研究開発の方・・・
ではなく秘書の方でした

資料もないし構造も知らない

お名刺を頂いて肩書を見たときに、発明者の方でないことはすぐに分かりました
しかも、これまで特許出願をされた経験はないお客様
内心で「やだなー、こわいなー」と思っていました
しかし、そんなことも言っていられないので、まずはお打合せ・・・の前に特許制度の説明です
こんなこともあろうかと、事前に持ち帰り資料を準備しておきました
あとは、これを持ち帰って読んで頂ければ大枠は伝わるでしょう・・・という期待のもと説明を続けます

制度説明が終わって、ようやく発明の内容をお伺いすることになりました
しかし、まず、資料がない
正確には発明品のコンセプトを説明したパワポ資料はあるのですが
図面や構造を説明する資料がない
とりあえず、用途とそのメリットだけは文章にまとめられていましたが
お客さんがおっしゃるには『外形も構造も分からない
しかし、確定していることだ一つだけありました
そう、『絶対に特許にしなければいけない』『絶対に特許にしなければいけない』『絶対に特許にしなければいけない
(大事なことなので三回・・・)
幸いなことに『特許になるなら手段は問わない』ということだったので
関連技術を調査することにして
外形と構造については、後日補足資料を送って頂くことにしました

先行技術見つかる

まぁ、外形も構造も分からないけれど機能は分かるということで
幸い出願件数が少ない分野であったこともあり、なんとか特許調査をやってのけました
結果、先行技術見つかる・・・それも複数
というわけで、その残念な結果をご報告してケースをクローズすることに
・・・できませんでした
なぜなら、『絶対に特許にしなければいけない』から
(蛇足ですが、こういうときの『絶対』って、発明者本人が言っているわけではなくて忖度じゃないの?って思います)

代わりに送られてきたのが外形の手書図面
これでようやく発明品の外形は分かりました
だがしかし『こいつ・・・動くぞ!!
動くのかよこれ・・・
ダメ元でどうやって動くのかを質問してみると『確認してご連絡します』というお返事
あれ?案外、知ってる人がいるんじゃないだろうか?
これならなんとかなるかもしれない

なんとか ・・・なりませんでした
知らぬ、分からぬ、創作できぬ
というありがたいお言葉を頂戴することになり
こちらも一応は情報が無ければ書けないとお伝えしたのですが
とにかく『絶対に特許にしなければいけない
ということで、情報は出せないけれど、出願はしなければならない、出すからには特許にしなければならない
という、詰んだ状態に追い込まれてしまいました
(下手に調査料を請求しなければ良かった・・・)

私が発明します→拒絶されました

すでにご相談頂いてから半年は経過していて
こうなったら仕方がないので、三年後に忘れていることを期待して『私が発明します
(これは、言い過ぎ)
取り合えず、機能は分かるので実施可能な程度に構造を想像して明細書と図面を書きました
それから瞬く間に三年が経過して
忘れて・・・ないよね
審査請求しますよね・・・そうですよね
だって、『絶対に特許にしなければいけない』のだから

とはいえ、こちらも勝算が無い訳ではない
調査をした上で、落し所もきっちり仕込んである
出願した以上、代理人として審査請求しないわけにもいかない
ええい、ままよ!』→ダメでした
無情にも通知される拒絶理由
せめてもの救いは、進歩性の不備が指摘されている点。
そして、『特許になるなら手段は問わない』となれば
負けること(拒絶査定)はあるまい
ということで、がっつり補正をして

・・
・・・
無事特許査定を得ることができました!

終わりに

・・・あのときの特許証はキチンと飾っていてくれるのかしら?
と思って調べてみましたが、どうやら年金は納付されているもよう
社長さんが喜んでいてくれていればいいなぁ

なお、今回の企画に関して他の参加者様の記事をまとめていますので
弁理士の日記念ブログ企画2022」もご覧になって頂ければ幸いです

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