個人発明家がサブマリン特許化実施中
拒絶理由通知に対する応答期間経過後に、手続補正書(期間外)を提出して、却下を受け続けている方を発見した。
どうやら、査定を受けないために、故意に審査を遅延させているようだ。
.2016年2月12日付手続補正書(espcenet)
『中間処理の応答期間を遠に過ぎていることを利用して、本願をサブマリン特許出願として20年間の存続期間中に温存させることを決定した。そして、成りすまし犯が世に製品を出した後でそれを狙い撃ちする分割特許出願を実施するので宜しくお願いする。』(2016年2月12日付手続補正書より引用)
実際、審査経過を見ると、2014年11月4日に拒絶理由通知書が発行されているが、いまだに査定が出ていない。
これは、伝聞による推測だが、却下処理が終わるまでは方式審査課にジョブが回っているところ、それが確定する前に次のジョブ(却下処理)が回ってくるために、実体審査(審査部)にジョブが回っていないと思われる。
ところで、方式審査課の方には気の毒なことだなと思っていたが、TPP改正法(存続期間調整)を組み合わせると極悪かもしれないと気が付いた。
新特67条2項によれば、存続期間は、出願日から五年経過した日又は審査請求から三年経過した日のいずれか遅い日(基準日)以後に特許権の設定の登録がされたときは、延長登録の出願により延長できる。
そして、同新3項柱書によれば、延長可能期間は、基準日から特許権の設定の登録の日までの期間に相当する期間から、所定の期間を合算した期間を控除した期間である。
つまり、特許庁の審査遅延によって、審査請求から四年経過した日(基準日)に特許権の設定の登録がされたときは、存続期間の一年延長が認められる。
※この絵に詳しい。
そこで、本件のように、出願人が故意に審査遅延を図った場合が問題となる。
ここで、新特67条3項1号によれば、特許法に基づく通知又は命令(拒絶理由通知は除く)があった場合において、当該通知又は命令を受けた場合に執るべき手続が執られたときにおける、当該通知又は命令があった日から当該執るべき手続が執られた日までの期間、は延長可能期間から控除される。
今回の場合、手続補正書を却下する却下理由通知(特18条の2第1項)に対して弁明書提出があった(執るべき手続が執られた)場合、その間の期間は延長可能期間から控除されるのだろうが・・・。
どうやら、弁明書を提出している様子はないので、これでは延長可能期間から控除できないように思われる。
となると・・・補正書を出し続けている間は存続期間を延長できるかもしれない!
まぁ実際には、出願人が故意に審査遅延を図った場合に延長できるはずはないので、新特67条3項4号で広く控除の対象とするのではないかと思われる。
すなわち、特許法上の処分について、出願人の行為(期間外の補正書提出)により当該処分(査定)を保留した場合における、当該行為があった日から当該処分を保留する理由がなくなった日までの期間(新特67条3項4号)、で読むのだと思う。
でも、条文を素直に読むと、「処分を保留する理由がなくなった日」がいつなのか、微妙だよなぁ・・・
あと、IDSのように自発的情報提供(上申書)を行って、審査が遅延した場合には、どう扱われるのか・・・
改正法が施行されたら、審査遅延のテクニックが人気になるやもしれない。
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