論文試験勉強法

使用教材

条文集(例えば四法対照法文集
青本(工業所有権法逐条解説)
改正本(産業財産権法の解説)
論文試験用のレジュメ集(例えば、TAC論文マニュアル、LEC論文アドヴァンステキスト」)


勉強方法

①論文用レジュメの要約集
短答試験終了後、論文試験日までは非常に短期間ですので、この間に必須科目の全範囲の復習と重要項目の暗記をするためには、論文用レジュメでは間に合いません。そこで、短答試験の勉強開始前、つまり2月に入る前に論文用レジュメの要約集を作成しておき、短答試験後は何度も読み返しをします。
具体的なまとめ方としては、例えば、特許法の「自然法則」の場合、特許法2条1項に関連するレジュメの内容をまとめて、さらに「自然法則ではない例、自然法則の利用、技術的思想、創作、単なる発見、高度のもの、ソフトウェア、医療業、発明に該当しない場合」のそれぞれの項目について、必要な内容をまとめておきます。ここで、必要な内容とは、レジュメの内容の意味を変えない程度にコンパクトに再構成した内容です。なお、私の作成したオリジナル論文用レジュメを要約したサンプルを公開しますので、参考にして下さい。
※要約書の作成に際しては、当年度の法改正を反映させることに注意してください。また、この要約集の作成は、初学者の方が特許法の内容及び論文の構成を勉強するのにも役立ちます。

②答案練習
論文試験の勉強に必ず必要な勉強です。論文試験では、知識の他に論文作成のテクニックが要求されます。最も簡単で確実な勉強方法は、受験機関の論文対策講座を受講することです。なお、受験機関による論文答練は、短答試験の勉強開始前の1~2月の間に行われます。また、金銭的又は時間的余裕がない方は、論文用レジュメで論文の基本構成と論点等を勉強した上で、過去問等で事例問題の解答練習をして下さい。

論文の簡単解説
論文を作成する場合、まず論文構成から始めます。個人差もありますが、論文構成は10~15分をかけて行い、時間内に書き終わるように且つ必要項目を落とさないように注意します。特に、時間内に自分が書ける量に応じて、各項目をどの程度厚く書くのかを、書き始める前に決めておきます。ところで、論文の書き方には正解がありません。項目さえ挙げられていれば後は自由であり、いかに読みやすく説得力のある(論理的な)文章を書くかで、合否が決まります。

※基本問題の論文構成例
例えば、「自然法則を利用した発明について述べよ。」という問題の場合、
まず、定義※1 から始めます。そして、問題提起※2 をします。ここで、根拠となる条文や出典は、括弧書きを設けて記載して下さい。特に、根拠条文が抜けると高得点につながりません。最後に結論※3 を記載します。最低限の記載はこの程度ですが、この後は、時間に応じて、文言(自然法則の利用、技術的思想、創作、高度のもの等)の説明、具体例(自然法則ではない例、発明に該当しない例等)、論点(ソフトウェア発明、医療業について等)などを書いていきます。
※1 「自然法則を利用した発明とは、自然界において経験によって見出される法則を利用した発明のことをいう。」
※2 「特許法は、発明の保護及び利用を図ることにより発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする(1条)。しかし、発明の意義が不明確であると解釈上の疑義が生じ(青本)、無用な争いが生じる原因となる。」
※3 「そこで特許法は、発明という用語の意義を明確にすることで解釈上の疑義をなくすために、自然法則を利用した技術的思想のうち高度のものと定めている(2条1項)。」

※事例問題の論文構成例
例えば、「甲の発明したソフトウェアAに係る特許出願に対して、自然法則を利用していない旨の拒絶理由が出された場合に、考慮する事項について述べよ。」という問題の場合、
まず事例検討※1 を行います。ここで、人物(甲、乙等)や記号(発明A等)を明記すると読みやすい論文になります。続いて、考慮事項や取り得る措置を問う問題の定型句※2 を挿入します。これ以降、結論→理由といった流れが基本構成となります。そして、要件具備の場合と、要件不備の場合と、に場合分けをし、それぞれ考慮事項を結論→理由の流れで列挙※3 します。また、余裕があればなお書きで加点要素※4 を追加します。同様に、全ての考慮事項をもれなく列挙します。
※1 「ソフトウェアに係る発明は、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている場合、自然法則を利用した技術的思想の創作といえる。そのため、本問においては、甲の発明したソフトウェアAによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているという要件を具備しているか否かが問題となる。」
※2 「拒絶理由通知に対応するに際して、甲はまず、拒絶理由の内容を考慮すべきである。これにより取り得る措置が異なるからである。」
※3 「上記要件を具備している場合、甲は意見書を提出してその旨を反論することを考慮すべきである。これにより審査官の認定が変われば、特許査定となり得るからである。」
※4 「なお、意見書を提出する場合、審査官により指定された期間内に提出すべき点を考慮すべきである。」

③模擬試験(論文模試)
短答試験の勉強でなまってしまった論文作成の勘は、早期に取り戻す必要があります。そこで、短答試験終了後、論文試験前に、必ず一回は受験機関の模擬試験を受けて下さい。

スケジュール

重要
論文試験の勉強期間中に中だるみしてしまうことを防ぐため、短答試験後には短いオフ期間を設けて下さい。また、模擬試験を受ける場合は、オフ期間に申込を済ませて下さい。短答試験の合格発表後は申込が集中するので、定員オーバーで申込めないことがあるからです。なお、短答試験終了後は、短答試験の採点を行って下さい。点数によって模擬試験の回数を減らしても良いですし、何より短答合格の目処がたっていれば、モチベーションが高まります。ここで、一つ注意が必要なことに、受験機関の発表している合格基準は、前後2点程度のずれが生じるので当てになりません。強いて基準が必要であれば、40点取っていればまず合格と考えて良いと思います(40点未満は不合格の可能性が高いというわけではありません。)。

短答試験の勉強開始前(~2月の間)
短答試験の勉強を始める前、つまり2月になるまでの間に、論文用レジュメの要約集の作成しておきます。短答試験の勉強開始から論文試験終了までの間には、ほとんど余裕がありませんので、必ず事前にレジュメを作成しておきます。

短答試験終了後~論文試験二週間前
短答試験の勉強で論文作成から遠ざかっているので、勘を取り戻すために、週末は受験機関の模擬試験を受けます。回数は多いほうが良いですが、余裕がない場合は最低1回でも受けて下さい。また、模擬試験の予習及び復習を兼ねて、予め作成しておいた要約集の読み返しを行います。

論文試験二週間前~論文試験前日
予め作成しておいた要約集の読み返し及び暗記を行います。また、同時に、判例セレクト知的財産法を使った判例の勉強と、改正本の読み返しを行います。特に、本年度改正点については繰り返し復習をして、完璧に理解して下さい。
答案練習
私は、レジュメの読み返し及び暗記という方法で勉強しましたが、短答試験終了後から論文試験の間中、答案練習を繰り返すという勉強方法もあります。この場合は、事前(短答試験の勉強開始前)に論文用レジュメの暗記を済ませておき、論文作成力の回復及び強化を行うことになります。使用する論文としては、論文用レジュメを利用するのが良いと思います。


論文試験当日
朝食はやや遅め取り、昼食を取らない代わりに糖分を取ります。また、論文試験では一科目終わるたびに、次の科目の要約集の読み返しと水分補給を行います。試験の合間に勉強をすることで、頭を次の科目に切り替えておくためです。

選択科目勉強法

私は選択科目として弁理士の業務に関する法律を選択し、共通問題は民法について、選択問題は法の適用に関する通則法(国際私法)について解答しました。その他の科目については、受験機関の講座を受講するのが確実であると思います。なお、平成28年度弁理士試験より、「理工Ⅰ(機械・応用力学)」、「理工Ⅱ(数学・物理)」、「理工Ⅲ(化学)」、「理工IV(生物)」、「理工V(情報)」及び「法律(弁理士の業務に関する法律)」という科目に変更されました。そのため、法律の選択問題は「民法(総則、物権、債権)」のみになっています。

使用教材

早稲田セミナーの論文基本問題民法120選
LECの国際私法講座(現在は無いようです)←現在は「国際私法」の科目はありません。
有斐閣アルマの国際私法(第2版)←現在は「国際私法」の科目はありません。

勉強方法

 申し訳ございませんが、私は民法の試験講座を受講していませんので、教材等の正確な情報を教えることはできません。但し、司法試験と比較して難易度は低いので、簡単な勉強だけでも十分合格点を得ることができるものと思われます。
 
民法
論文基本問題の要約集を作成し、それを何度も読み返して暗記するという方法で勉強しました。また、民法の基礎的勉強については、地方公務員試験用の解説書を使用しましたが、インターネットで調べたり、旧司法試験用の基礎教材を使用しても良いと思います。但し、司法試験とは試験範囲が異なりますので、LECで行っている民法の講座を受講する方が確実だと思います。

 法律系選択科目対策講座(民法)(LEC)
 法律系選択科目対策答練(民法)(LEC)

スケジュール

必須科目の終了後すぐに選択科目の勉強を始め、論文用要約集の作成又はバージョンアップを行いました。その後、要約集の読み返しを2回行いました。
ちなみに、必須科目(特実意商)の勉強は、論文試験不合格の発表~短答試験の勉強開始の間も行っていました。しかし、選択科目の勉強は、要約集の作成も含めて必須科目の論文試験終了後から開始していました。実際にやってみた感想では、睡眠時間を削る必要はあるものの、3週間程度でも民法及び法の適用に関する通則法(現在は「国際私法」の科目はありません)の理解と、必要項目の暗記が可能だと思います。なお、当日の対策は必須科目と同じですが、試験時間が短いため昼食をとらなくても空腹を感じることはありませんでした。
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