某ティラミス商標は著作権侵害でも無効にはならない
年明け早々パクリ芸で話題をさらったティラミスヒーローの剽窃商標(以下、本件商標)ですが
デッドコピーであるため『著作権侵害しているから公序良俗違反で無効』などという話も出ているそうです。
じゃあ、著作権侵害によって公序良俗違反を理由に無効になるかというと・・・
なりません
というわけで、その理由を説明します
まず前提として以下のような争点が考えられます
①ティラミスヒーローのオリジナルロゴが著作物なのか
②本件商標はオリジナルロゴに依拠しているのか
③商標登録出願が複製権の侵害にあたるのか
いちいち説明すると発散してしまうので
①については、ありふれた表現ではないとして著作物に該当すると仮定します
②については、デッドコピーであることから依拠しているものと推定します
③については、出願自体が著作権侵害行為になるという外国判決もあるようですが
日本においてはそのような判決を発見できませんでした(多分出願行為は著作権を侵害しない)
ですが、出願時にロゴを無許諾で複製していると推定されるので、
複製権の侵害行為自体はあったものと仮定します
となれば『著作権侵害など許されない、当然無効!』と思うかもしれません
しかし、商標登録出願に際して著作権が侵害されていても無効にはなりません
著作権の侵害が商46条に規定された無効理由に挙げられていないからです
また、公序良俗違反を考慮しても、著作権侵害が直ちに無効理由にはなりません
実際、登録商標を使用したら他人の著作権と抵触するとしても商4条1項7号に違反しないという判決があります
(例えば、平成12年(行ケ)386)
それでは、著作権者が泣き寝入りなのかというと、これも違います
前提があるものと思われます
なお、商4条1項7号は他の無効理由と重複して適用され得るものですが(例えば無効2011-890089)
他の無効理由が適用される場合には、通常はそちらが優先して適用されると考えられます(7号の立証は困難なので)
そのため、10号,15号,19号が適用される場面では、通常は7号が争点になりません
なお、15号については周知が要件とされていませんが、周知であれば混同すると推定されます
ですので、7号が適用されないとおっしゃる専門家の方の多くは、周知である前提で話をしていると思います
つまり、デッドコピーであるので
・国内で周知であれば10号が適用され
・役務非類似としても15号,19号が適用される
ということでしょう(デッドコピーであるので不正の目的は推定される)
これを踏まえた上で、且つ以下の前提で本件商標に対する7号の適用可能性を検討しましょう
①オリジナルロゴが日本及び外国で周知ではない
②オリジナルロゴが著作物である
これらの前提に立つと7号が適用される理由としては以下のものが考えられます
A.他人の著作物を無許諾で出願している
B.他人の使用標章を剽窃している
なお、Bには、公共的な標章を剽窃するケース(例えば、チバニアン※異議2017-900179)と、
著名な標章を剽窃するケース(例えば、赤毛のアン※平成17年(行ケ)10349)もあります
ただし、これらは本件商標には当てはまらないので、ここでは触れません
さて、「A.他人の著作物を無許諾で出願している」ことが公序良俗に反するかというと
上記の判決が示す通り、直ちに公序良俗に反することにはなりません
ただし、著作物が著名である場合には、その顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的が認められるので
公序良俗に反する(取引秩序を害する)として無効とされる可能性があります(例えば、ポパイ※審判昭58-019123)
一方、B.他人の使用標章を剽窃している場合、不正な目的が認められれば無効とされ得ます
注意が必要なのは
周知性が要件にはならない
ということです
例えば、周知性が認めらない商標「CITYBLOCK」を剽窃したものとして
公序良俗違反を理由に無効とされた事例(無効2012-890080)があります
他には、「ASRock」を剽窃したものとして
公序良俗違反を理由に無効とされた事例(平成21年(行ケ)10297)があります
不正な目的としては、
・日本国内への参入を阻止するという加害目的
・商標権の譲渡による不正な利益を得る目的
などがあります
ここで本件商標について検討すると
①ティラミスヒーローのロゴは著名ではない
②しかし、ティラミスヒーローが改名を迫られたことからして警告があったと推測される
③②の推測から、日本国内への参入を阻止するという加害目的が推定される
ということから、「B.他人の使用標章を剽窃している」ことを理由に7号で無効になり得ると思います
まとめると以下の通りです
・著名でない他人の著作物を無許諾で出願しても、公序良俗違反で無効になるわけではない
・ただし、剽窃商標(デッドコピー)は周知でなくとも、公序良俗違反で無効になり得る
なお、本件商標に対しては異議申し立てがされているので
近々取り消されるかもしれません(商標権者は取消理由通知に対応しないと予想します)
そのときの取り消し理由が7号かどうか、とっても気になりますね
また、近年7号の射程は広がりつつあるので、この点も要チェックです
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なお、直近の本室更新は「H30年短答試験不著問04」です。
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